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作文テーマ「倫理」
<気づかう心>


気が付くと、私は南浦和駅のホームの階段を、2段飛ばしで駆け上がっていた。
車内で倒れた、見知らぬ人がいることを知らせに。

「車内での通話はご遠慮下さい」アナウンスの声に顔を上げると、
乗客は皆下を向き、携帯電話に夢中だった。
雑誌を読んでいた私も、つい携帯を取り出してしまった。
21時、新着メールはない。

電車内で携帯をいじることが「普通」になったのは、いつからだろう。
数年前までは車内アナウンスも「携帯電話のご使用はおやめください」だったはずだ。
そんな考えをよそに、乗客は死んだ魚のような目をして、
携帯の画面を見つめている。

電車が南浦和に到着する頃、「うぅっ!」と優先席の方で誰かが悲鳴を上げた。
優先席に座っていた女性だ。つい、私は立ち上がってしまった。
同時に、さっきまで携帯の世界にいた数名の乗客が「大丈夫ですか!?」と女性の周りに集まってきた。
見ず知らずの人達が、見ず知らずの女性を心配し、何とかしようとしている。
冷たい床に倒れこみ、苦悶の表情を浮かべている。どうやら身篭っているようだ。「大丈夫?」と耳元で声をかけているおばさんがハンカチを取り出し、指に巻き始めた。
指をギュッと噛み付かれていたが、おばさんは笑顔だった。
私は、必死で自分に出来ることを考えた。
列車が駅のホームへ入り、ドアが開くのと同時に駆け出した。
「急病人です!」怒鳴りこむように、駅長室に飛び込んだ。

駅員の後ろからホームへ戻ると、倒れた女性は素早くタンカに乗せられ、運ばれていった。
周囲にいた人々は、まるで自分の家族が倒れ、運ばれるのを見守るかのように、
安堵と不安の入り混じった表情を浮かべていた。

「急病人のため~」と車内アナウンスが響く。元の席へ戻り呼吸を整え、辺りを見回した。
手助けをした隣のサラリーマンも、前のOLも、携帯は持っていなかった。
モラルは守る心ではなく、気づく心、気遣う心だと強く感じた。

(785字)
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