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作文テーマ「サプライズ」
<父親の背中>


「今日、飲みに行かないか?」
普段めったに会話をすることのない、父からの突然の提案だった。
岩のような大きな手に、パンチパーマの父が、色あせた緑色のジャンパーをはおり、玄関の扉を開く。私はその後ろから、歩いて10分の飲み屋を目指した。

私は、父が苦手だった。頑固親父の見本のような人で、
小学校の頃、私がいじめられて泣きながら家に帰ると、
「男ならやりかえせ」と何度も怒鳴られた。
中学の頃から働き、最近では新築した家の庭の手入れをするのが日課の父も、
もうすぐ定年を迎える。

「あら、今日は倅さんと一緒かい?」のれんをくぐると、ざわつく店内から声が聞こえた。
父は無言のままカウンターの席に腰掛けた。私も少し戸惑いながら隣の席に座った。
「とりあえず、乾杯するか」家を出てからはじめて父が言葉を発した。
テレビの野球中継と、話し声がこだまする店内で、チンというグラスがぶつかる音がした。
私は、何を話したらよいのか、検討もつかなかった。
まるで受験生が合格発表を待つような、そんな緊張を感じた。
特に会話もないまま、お酒だけがなくなっていく。私は全く酔えずにいた。

焼酎が日本酒に変わる頃、父は自分が20歳だった頃の話をしはじめた。
親とのケンカ、仕事の苦労、母との出会い。そんな話すべてが驚きで、
初めて父をひとりの人間として見れた。

店を出ようと席を立った父の足元はフラつき、つい後ろから肩を支えて、驚いた。
父の肩幅は小さくなり、色あせたジャンパーの肩があまっている。
思い出の中の父の姿とは、全く違っていた。会計でお金を取り出した父の手は、
しわが目立ち、私の手よりも小さく見えた。

店の外に出ると、秋らしい肌寒い風が吹いていた。
「俺の夢がひとつかなったよ」よい気分だったのだろう、父がぼそりとつぶやいた。
ひさしぶりに見た父の笑顔に、私も思わず笑みがこぼれた。

(800字)

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