IEEE1394
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作文テーマ「道」
<道案内>


「すいません、法学部棟はどこでしょうか?」
振り返ると、そこには目を閉じ、ステッキを持った男性が立っていた。
腕時計に目を向ける。授業が始まるまで、かなりある。


「一緒に行きましょう」と笑顔で応え、はっとした。
目の不自由な彼に、笑顔は伝わらない。
そう思うと急に、どう接したらよいのか不安になった。

彼の横に立ち、手を差し出した。すると彼は、やさしく私の手をとり
「ありがとうございます」と、さっきまで私が立っていた方向に礼をした。
今いる場所から目的地まではおよそ300m。
ゆっくりと、彼の歩幅に合わせて進みながら、話をした。
彼は、遠藤君といい、私と同じ大学生だという。
すると、前から私の友人が歩いてきた。

「おはよう」友人の声に、下を向いて歩いていた遠藤君が顔を上げ、会釈をした。
友人はその様子にとまどっているようだった。
すれ違う際、私は小声で「またあとで」と言った。
遠藤君の姿を見て状況を把握したのか、友人は早々と去っていった。

その直後、遠藤君は「すいません」と私に謝った。
おそらく、私が友人と会話できなかったのは、自分のせいだと感じたのだ。
その言葉を聞き、胸がしめつけられそうになった。
彼は、日々どれだけ周囲に気を使いながら生きているのだろう。
そう思うと、なんともいえない気分になった。

目的地に着くと、遠藤君は「ありがとうございました」と礼を言い、手を離した。
そして、カツカツとステッキの音を響かせながら、教室の中へと消えていった。
彼の背中を見つめながら、彼はどんな世界を見ているのだろうと考えた。
相手の気持ちを理解してみよう。
そして、私は目を閉じ、大学内を歩いてみることにした。

周囲の音が大きく聞こえる。
慣れた道なのに、まるで見知らぬ海外の街をひとりで歩いているような気分だった。
怖くなって、目を開くと、手には汗がにじんでいた。


私は遠藤君に道を教えてあげた。
彼は私に、忘れかけていた「感覚」の大切さを教えてくれた。
(799字)

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作文テーマ「倫理」
<気づかう心>


気が付くと、私は南浦和駅のホームの階段を、2段飛ばしで駆け上がっていた。
車内で倒れた、見知らぬ人がいることを知らせに。

「車内での通話はご遠慮下さい」アナウンスの声に顔を上げると、
乗客は皆下を向き、携帯電話に夢中だった。
雑誌を読んでいた私も、つい携帯を取り出してしまった。
21時、新着メールはない。

電車内で携帯をいじることが「普通」になったのは、いつからだろう。
数年前までは車内アナウンスも「携帯電話のご使用はおやめください」だったはずだ。
そんな考えをよそに、乗客は死んだ魚のような目をして、
携帯の画面を見つめている。

電車が南浦和に到着する頃、「うぅっ!」と優先席の方で誰かが悲鳴を上げた。
優先席に座っていた女性だ。つい、私は立ち上がってしまった。
同時に、さっきまで携帯の世界にいた数名の乗客が「大丈夫ですか!?」と女性の周りに集まってきた。
見ず知らずの人達が、見ず知らずの女性を心配し、何とかしようとしている。
冷たい床に倒れこみ、苦悶の表情を浮かべている。どうやら身篭っているようだ。「大丈夫?」と耳元で声をかけているおばさんがハンカチを取り出し、指に巻き始めた。
指をギュッと噛み付かれていたが、おばさんは笑顔だった。
私は、必死で自分に出来ることを考えた。
列車が駅のホームへ入り、ドアが開くのと同時に駆け出した。
「急病人です!」怒鳴りこむように、駅長室に飛び込んだ。

駅員の後ろからホームへ戻ると、倒れた女性は素早くタンカに乗せられ、運ばれていった。
周囲にいた人々は、まるで自分の家族が倒れ、運ばれるのを見守るかのように、
安堵と不安の入り混じった表情を浮かべていた。

「急病人のため~」と車内アナウンスが響く。元の席へ戻り呼吸を整え、辺りを見回した。
手助けをした隣のサラリーマンも、前のOLも、携帯は持っていなかった。
モラルは守る心ではなく、気づく心、気遣う心だと強く感じた。

(785字)


作文テーマ「サプライズ」
<父親の背中>


「今日、飲みに行かないか?」
普段めったに会話をすることのない、父からの突然の提案だった。
岩のような大きな手に、パンチパーマの父が、色あせた緑色のジャンパーをはおり、玄関の扉を開く。私はその後ろから、歩いて10分の飲み屋を目指した。

私は、父が苦手だった。頑固親父の見本のような人で、
小学校の頃、私がいじめられて泣きながら家に帰ると、
「男ならやりかえせ」と何度も怒鳴られた。
中学の頃から働き、最近では新築した家の庭の手入れをするのが日課の父も、
もうすぐ定年を迎える。

「あら、今日は倅さんと一緒かい?」のれんをくぐると、ざわつく店内から声が聞こえた。
父は無言のままカウンターの席に腰掛けた。私も少し戸惑いながら隣の席に座った。
「とりあえず、乾杯するか」家を出てからはじめて父が言葉を発した。
テレビの野球中継と、話し声がこだまする店内で、チンというグラスがぶつかる音がした。
私は、何を話したらよいのか、検討もつかなかった。
まるで受験生が合格発表を待つような、そんな緊張を感じた。
特に会話もないまま、お酒だけがなくなっていく。私は全く酔えずにいた。

焼酎が日本酒に変わる頃、父は自分が20歳だった頃の話をしはじめた。
親とのケンカ、仕事の苦労、母との出会い。そんな話すべてが驚きで、
初めて父をひとりの人間として見れた。

店を出ようと席を立った父の足元はフラつき、つい後ろから肩を支えて、驚いた。
父の肩幅は小さくなり、色あせたジャンパーの肩があまっている。
思い出の中の父の姿とは、全く違っていた。会計でお金を取り出した父の手は、
しわが目立ち、私の手よりも小さく見えた。

店の外に出ると、秋らしい肌寒い風が吹いていた。
「俺の夢がひとつかなったよ」よい気分だったのだろう、父がぼそりとつぶやいた。
ひさしぶりに見た父の笑顔に、私も思わず笑みがこぼれた。

(800字)



ブログ復活

掲示板にて、M田さまがお礼の返事は結構ですとおっしゃて
いただいたのですが、この場を借りて御礼申し上げます。
ありがとうございました。
(以前は作文のほうにもコメントして頂き非常にうれしい限りです…)


ここ最近は作文に苦戦していました…。
ようやく実感ではないですが、「読み手の気持ちを考える」ことが
どういうことかを理解してきた気がします。


もし、このブログの作文を読んでくださる方の中で、
気づいた点、感想でも何でも結構です。


コメントを頂けたらと思います。




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